パソコンのCPUグリス塗り替え|熱暴走を防ぐDIY手順と選び方

🔧 CPUグリス塗り替えDIYガイド

PC冷却性能を最大化し、熱暴走を防ぐ技術的な作業です。
正しい手順で実行すれば、CPU温度を5-15℃改善できます。

★★★☆☆
難易度:中級 | 作業時間:60-90分 | 必要な技術:PC分解経験

🌡️ CPUグリスの役割と熱暴走のリスク

CPU温度の危険度レベル

~70℃
安全域
70-85℃
注意域
85℃~
危険域

🔬 CPUグリスの科学的役割

CPUとヒートシンクの間には、製造公差により数ミクロンの微細な隙間が存在します。空気の熱伝導率は0.024W/m・Kと極めて低いため、この隙間を熱伝導率1-20W/m・Kのグリスで埋めることで、熱抵抗を劇的に改善します。

グリス劣化のメカニズム:
• 熱サイクルによる分子構造の変化
• 溶剤の蒸発による粘度上昇
• 酸化による熱伝導率の低下
• ポンプアウト現象(圧力による流出)

🧪 CPUグリスの種類と性能比較

グリス種類熱伝導率
(W/m・K)
価格帯耐久性塗りやすさ推奨用途
シリコン系
(MX-4、AS-5)
4-9500-1,500円5-7年一般用途・初心者
シルバー系
(AK-450A-SS)
8-12800-2,000円3-5年高性能PC・ゲーミング
カーボン系
(GS-11)
11-151,500-3,000円4-6年オーバークロック・高発熱CPU
ダイヤモンド系
(JP-DX1)
15-203,000-5,000円7-10年極限性能・業務用
液体金属系
(Conductonaut)
731,500-2,500円10年+×上級者・極限冷却

液体金属グリスの注意事項

アルミニウム製クーラーには使用不可(腐食リスク)
• 周辺回路への付着でショートの危険性
• 取り扱いには専門知識が必須
• 初心者にはシリコン系またはシルバー系を推奨

🛠️ 必要な工具と準備物

基本工具

プラスドライバー(#1、#2)
マイナスドライバー(小)
ピンセット(静電気対策済み)
懐中電灯またはヘッドライト

清掃用品

無水エタノール(99%以上)
マイクロファイバークロス
綿棒(先端の細いもの)
プラスチック製ヘラ(付属または別途購入)

安全対策

静電気防止手袋
静電気防止リストストラップ
作業マット(導電性)
マグネット付きトレイ(ネジ保管用)

📋 事前準備と安全対策

準備フェーズ
1

現在の温度測定

作業前の基準値として、アイドル時と負荷時のCPU温度を記録します。

2

完全シャットダウン

PCを完全にシャットダウンし、電源ケーブルを抜いて最低15分間放置してコンデンサを放電させます。

3

作業環境の整備

静電気のない環境で、十分な照明と作業スペースを確保します。湿度40-60%が理想的です。

4

PCケースの開封

サイドパネルを取り外し、内部のホコリを圧縮空気で除去します。特にCPUクーラー周辺を重点的に清掃。

🔧 CPUクーラー取り外し手順

分解フェーズ
1

ファンケーブルの取り外し

CPUファンの電源ケーブルをマザーボードのCPU_FANヘッダーから慎重に抜きます。

2

クーラー固定機構の解除

Intel:プッシュピンを反時計回りに回して引き上げ
AMD:レバーを上げてクリップを外す

3

クーラーの取り外し

グリスの粘着でCPUが一緒に外れる危険があります。少しずつ左右に動かしながら慎重に取り外します。

クーラー取り外し時の重要注意点

CPUが一緒に外れてピンが曲がる事故を防ぐ
• グリスが硬化している場合は、PC起動で温めた直後に作業
• 無理に引っ張らず、捻りながら少しずつ取り外す
• AMD CPUの場合、特にCPU固定レバーの確認が重要

🧽 古いグリスの除去方法

清掃フェーズ
1

CPUヒートスプレッダーの清掃

無水エタノールをマイクロファイバークロスに含ませ、一方向に拭き取ります。円を描くような動きは避けます。

2

ヒートシンクベースの清掃

クーラー側も同様に清掃。特に溝がある場合は綿棒で丁寧に除去します。

3

完全乾燥の確認

アルコールが完全に揮発するまで5-10分間待機。水分が残っているとグリスの性能が低下します。

🎨 グリス塗布方法の比較検証

🍚 米粒法(Point Method)

適量コントロールが容易
初心者でも失敗しにくい
エアバブルが入りにくい
端部での薄膜化リスク
大型CPUでカバー不足の可能性

推奨量:米粒~小豆大
適用CPU:一般的なサイズ

❌ X字法(Cross Method)

大型CPUでも全面カバー
均等な圧力分散
量の調整が困難
はみ出しリスク高

推奨量:線の太さ1-2mm
適用CPU:大型・楕円型

🏗️ ヘラ塗り法(Spread Method)

最も均一な膜厚
プロフェッショナル仕上がり
温度ムラ最小化
技術と経験が必要
エアバブル混入リスク

推奨厚:0.1-0.2mm
適用CPU:すべてのタイプ

📊 性能検証結果(Core i7-12700K + NH-D15での実測)

米粒法:アイドル32℃ / 負荷78℃
X字法:アイドル31℃ / 負荷76℃
ヘラ塗り:アイドル30℃ / 負荷74℃

適切に実行されれば、方法による差は2-4℃程度。手法より「適量」と「均一性」が重要です。

🎯 推奨グリス塗布手順

塗布フェーズ
1

グリス量の決定

標準CPU(~40mm角):米粒大
大型CPU(40mm角~):小豆大
サーバーCPU:大豆大

2

塗布位置の確定

CPUヒートスプレッダーの幾何中心に配置。偏心すると不均一な広がりの原因となります。

3

クーラー装着準備

クーラーを一気に装着し、固定機構を対角線順序で締め付けます。途中で持ち上げると気泡が入ります。

4

圧着とエージング

装着後、軽く圧力をかけて5分間放置。その後、数回の熱サイクルでグリスが馴染みます。

📊 温度測定とパフォーマンス確認

Core Temp

特徴:コア別温度表示
用途:リアルタイム監視
推奨度:⭐⭐⭐⭐⭐

HWMonitor

特徴:総合ハードウェア監視
用途:詳細データ収集
推奨度:⭐⭐⭐⭐⭐

Prime95

特徴:CPUストレステスト
用途:最大負荷温度測定
推奨度:⭐⭐⭐⭐☆

OCCT

特徴:安定性テスト
用途:長時間負荷確認
推奨度:⭐⭐⭐⭐☆

🧪 性能テストプロトコル

1. ベースライン測定:30分アイドル後の温度
2. 負荷テスト:Prime95 Small FFTs 15分間
3. 安定性確認:通常使用でのピーク温度
4. 経時変化:1週間後の再測定

成功基準:
• アイドル温度:室温+5-15℃
• 負荷温度:TJMax(通常100℃)-15℃以下
• 温度改善:5-15℃の低下

🚨 トラブルシューティング

❌ 問題:温度が改善されない

原因:グリス量不足、エアバブル、クーラー接触不良
対策:再塗布、固定圧力の確認、サーマルパッド劣化チェック

❌ 問題:温度が以前より高くなった

原因:グリス過多、不均一塗布、異物混入
対策:完全除去して再作業、清掃不足の確認

❌ 問題:起動しない

原因:CPU固定不良、電源ケーブル未接続、静電気損傷
対策:全接続の再確認、最小構成での起動テスト

❌ 問題:グリスがはみ出した

原因:過剰塗布、圧力過多
対策:はみ出し部分の除去(導電性グリスは特に注意)

⚡ パフォーマンス最適化と関連メンテナンス

最適化フェーズ
1

ファンカーブの調整

BIOS/UEFIまたはファンコントロールソフトで、温度に応じたファン回転数を最適化します。

2

ケース内エアフローの改善

吸気と排気のバランスを調整し、CPUクーラーへの新鮮な空気供給を確保します。

3

定期メンテナンスの計画

グリス交換周期(2-3年)、ダストフィルター清掃(月1回)、ファン交換(3-5年)のスケジュール設定。

💡 プロのメンテナンス戦略

予防保全:温度上昇の傾向を監視し、劣化前に交換
季節調整:夏場前のメンテナンスで熱対策強化
使用状況別:ゲーミング・クリエイター用途は短サイクル
記録管理:作業履歴と温度データの保存

🔗 関連するPC改善施策

CPUグリス交換と合わせて実施すると効果的な施策:
Cドライブ容量最適化:システム全体のパフォーマンス向上
メモリクリーニング:RAMの最適化で発熱抑制
電源ユニット点検:効率的な電力供給で発熱削減
BIOS/UEFI更新:最新の熱管理機能活用

修理・メンテナンス相場シミュレーター

修理・メンテナンス費用の目安シミュレーター(更新日:2025年10月3日)

製品の修理やメンテナンスの相場をシミュレーションできます。適切なカテゴリー分類と現実的な料金設定で、より正確な目安を提供します。

⚠️ 重要な注意事項

本ツールは参考目安です。実際の料金は機器の状態、年式、メーカー、地域により大幅に変動します。必ず複数業者で実際の見積もりを取得してください。

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