インターネットを見ていると、突然「ウイルスに感染しました!」「トロイの木馬に感染」といった警告画面と大音量の警告音が鳴り響き、不安になった経験はありませんか?
それは、パソコン修理を騙る「サポート詐欺」かもしれません。
また、正規の修理業者だと思って依頼したら、法外な高額請求をされたり、データを盗まれたりする「悪質な修理トラブル」も後を絶ちません。
💡 サポート詐欺は「PC版オレオレ詐欺」
サポート詐欺の手口は、電話を使った「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」に似ています。「あなたのPCが大変なことになっている(家族が事故に遭った)」とウソの情報で不安を煽り、「今すぐ電話して(ATMに行け)」と冷静な判断力を奪い、高額なサポート契約(不正送金)へと誘導するのが目的です。
この記事では、大切なパソコンとデータを守るため、サポート詐欺や悪質な修理トラブルの具体的な手口と、万が一遭遇してしまった場合の緊急対処法、そして信頼できる業者を選ぶための予防策を徹底的に解説します。
⚠️ まず覚えておくこと:警告画面の電話番号には絶対に電話しない!
Microsoftや大手セキュリティ企業が、ブラウザの警告画面で利用者に電話をかけさせることは絶対にありません。画面に表示された電話番号は100%詐欺です。慌てて電話しないでください。
1. パソコン修理を騙る「サポート詐欺」の手口
サポート詐欺は、利用者の不安を巧みに利用します。以下は、典型的な詐欺の流れです。
ネット閲覧中に突然、警告音と共に「ウイルス感染」「Microsoft Windows Firewall 警告」などの偽画面が表示される。
画面に表示された電話番号(偽のサポート窓口)に電話をかけるよう促される。
電話に出た片言のオペレーターに指示され、「修理のため」と称して「UltraViewer」などの遠隔操作ソフトをインストールさせられる。
遠隔操作でPCを操られ、「修理」のふりをした後、高額なサポート契約料やセキュリティソフト代を請求される。この過程で個人情報やクレジットカード情報が盗まれる。
ネットバンキングにログインさせ不正送金されたり、コンビニで高額なプリペイドカード(iTunesカード5万円分など)を購入させ、コード番号を騙し取られたりする。
💡 遠隔操作ソフトは「家の合鍵」を渡す行為
詐欺師に言われるがまま遠隔操作ソフトをインストールするのは、見知らぬ訪問者に「家の点検です」と言われ、疑いもせずに「家の合鍵」を渡してしまうのと同じです。一度合鍵を渡してしまえば、あなたがいない間も自由に出入りされ、金品(個人情報)を盗み放題になってしまいます。
2. 【緊急】サポート詐欺に遭遇した時の対処法
どの段階で詐欺に気づいたかによって、対処法が異なります。慌てず、以下の対応を取ってください。
状況1:警告画面が出た時点(電話・操作前)
対処法:ブラウザを強制終了する
- 絶対に画面の電話番号に電話しないでください。
- ショートカットキーでブラウザを閉じる:
- Windows: 「Alt」+「F4」 または 「Ctrl」+「W」
- Mac: 「Command」+「W」 または 「Command」+「Q」
- タスクマネージャーで強制終了する:
- Windows: 「Ctrl」+「Alt」+「Delete」を押し、タスクマネージャーを起動。該当ブラウザを選択し「タスクの終了」。
- Mac: 「Command」+「Option」+「Esc」を押し、強制終了メニューからブラウザを選択。
状況2:遠隔操作ソフトを入れてしまった時点
対処法:即座にネットワークを切り、ソフトを削除
- ① ネットワーク切断:
すぐにWi-Fiを切るか、LANケーブルを抜いてPCをオフラインにします。 - ② リモートソフトの削除(アンインストール):
Windowsは「コントロールパネル」の「プログラムと機能」、Macは「アプリケーション」フォルダから該当ソフトを削除します。 - ③ 全パスワードの変更:
別の安全な端末(スマホなど)から、ネットバンキング、SNS、メールなど、全てのオンラインアカウントのパスワードを変更します。 - ④ OSのクリーンインストール(初期化):
情報漏洩やマルウェア感染のリスクが残るため、PCを完全に初期化(OSクリーンインストール)することを強く推奨します。
3. 悪質なパソコン修理業者の手口
サポート詐欺とは別に、正規の修理業者を装いながら詐欺的な行為を行う悪徳業者も存在します。
⚠️ 「格安固定料金」の落とし穴に注意!
「どんな修理でも4,980円」「データ復旧一律9,980円」といった格安すぎる固定料金には裏があります。これは客寄せのための「見せ金」であり、修理を進める中で「部品代が別途必要」「追加作業が発生した」と、最終的に桁違いの追加料金を請求される手口が横行しています。
悪徳業者の主な手口
- 高額な追加請求:
見積もり後に「別の箇所も壊れていた」と勝手に作業を進め、高額な追加料金を請求する。 - 不安を煽る強引な契約:
「今すぐ直さないとデータが全部消える」「他では絶対に直せない」と不安を煽り、高額な契約をその場で迫る。 - 中古・不良部品への交換:
新品と偽り、製造年月日が古い中古のHDDやメモリと交換し、新品価格を請求する。 - 不要な修理の提案:
故障箇所以外の修理や部品交換を勧め、費用を不当に水増しする。 - データ窃取・流出:
修理中にHDD内のプライベートな写真やクレジットカード情報、顧客リストなどの個人情報を盗み取る。 - HDDの返却拒否(持ち逃げ):
高額な請求を拒否すると、「修理代を払うまでHDD(データ)は返さない」と人質に取ったり、最悪の場合、連絡が取れなくなる。 - 口コミの強要・SNSでの晒し:
修理後に良い口コミを書くよう強要したり、顧客の悪口やPC内部の写真をSNSで公開したりするモラルの低い業者が存在する。
4. 悪質業者に騙されないための予防策(優良業者の選び方)
大切なパソコンとデータを守るためには、業者選びが極めて重要です。
優良業者を見抜くチェックポイント
- 料金体系が明確か:
ホームページで料金表を公開し、見積もりで「下限」と「上限」を明示してくれるか。 - 説明責任(3C)を果たしているか:
故障の原因 (Cause)、修理内容 (Contents)、価格 (Cost)の「3C」を、素人にも分かる言葉で明確に説明してくれるか。 - 追加料金のルールが明確か:
見積もりから変更が出る場合、必ず「事前に連絡し、顧客の承認を得てから作業する」と明言しているか。 - 実績と評判(口コミ)は良いか:
Googleマップやレビューサイトで、極端に悪い口コミや、「高額請求された」という書き込みがないか確認する。 - セキュリティ意識が高いか:
「プライバシーマーク」や「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」など、個人情報保護の認証を取得しているか。 - 修理後の保証があるか:
修理後に不具合が再発した場合に備え、最低でも3〜6ヶ月の保証期間を設けているか。 - 実店舗があるか:
宅配修理専門ではなく、実際に訪問できる実店舗があるか。万が一のトラブル時に「持ち逃げ」されるリスクを減らせます。
5. 修理依頼前に必須!自分でできるデータ保護対策
どれだけ信頼できる業者を選んだとしても、万が一の事故はあり得ます。修理に出す前には、必ず以下の対策を自分で行ってください。
【最重要】修理前の準備リスト
- ① データのバックアップ:
最も重要です。外付けHDDやクラウドストレージに必要なデータを全てコピーし、バックアップが正常に完了しているかを確認します。 - ② 機密情報の削除・暗号化:
他人に見られたくないファイル(プライベートな写真、家計簿など)は削除するか、暗号化しておきます。 - ③ ブラウザ情報の削除:
閲覧履歴、キャッシュ、保存されているパスワードを全て削除します。 - ④ アカウントのログアウト:
SNS、ネットバンキング、メール、通販サイトなど、全てのオンラインアカウントから必ずログアウトします。 - ⑤ 周辺機器の取り外し:
USBメモリ、SDカード、外付けHDDなどは全て取り外してから渡します。
⚠️ ログインパスワードは絶対に教えない!
診断のために必要だとパスワードを求められるケースがありますが、原則として教えるべきではありません。どうしても必要な場合は、修理用に権限の低い「一時的なローカルアカウント」を作成して渡し、修理完了後はそのアカウントを即座に削除し、自分のパスワードも変更しましょう。
6. もし悪質トラブルに巻き込まれたら?
悪質な業者と高額請求やデータ返却拒否などのトラブルに発展し、話し合いでの解決が困難な場合は、一人で悩まず第三者に相談してください。
📚 トラブル時の公的相談窓口
- 消費者生活センター・国民生活センター(局番なし:188)
業者とのトラブル相談や、クーリングオフ、交渉のサポートを行ってくれます。まずはここに電話しましょう。
- 警察相談専用電話(#9110)
緊急性の高くない要件での警察への相談窓口です。「脅迫されている」「データを人質に取られている」など、犯罪性が疑われる場合に相談してください。
- 法テラス(日本司法支援センター)
法的トラブルを解決するための総合案内所です。弁護士による無料相談など、法的な解決策を案内してくれます。
まとめ:冷静な対処と事前準備でトラブルを回避しよう
この記事では、サポート詐欺と悪質な修理業者の手口、そして対処法を解説しました。
- サポート詐欺:警告画面は「偽物」。絶対に電話せず、ブラウザを強制終了する。遠隔操作ソフトは「合鍵」と同じ。入れてしまったら即ネットワーク切断&削除。
- 悪質業者:「格安固定料金」は高額請求の入り口。「3C」による明確な説明と「プライバシーマーク」の有無で業者を見極める。
- 自己防衛:修理に出す前の「バックアップ」と「ログアウト」は必須。自分のデータは自分で守る意識が最も重要。
- 相談先:トラブル時は「188(消費者ホットライン)」にまず電話する。
💡 悪質業者の手口は「底なし沼」
悪質な業者の手口は、釣り上げられた高額請求という「底なし沼」に顧客を誘い込むことに似ています。一度足を踏み入れてしまう(修理を依頼してしまう)と、キャンセル料や追加料金という名目で、抜け出すためにより多くの費用を払わされてしまいます。この「沼」に落ちないためには、まず料金体系が明確で、安全なデータ管理体制を明言している「確かな土壌」を持つ業者を選び、事前にデータの「命綱」(バックアップ)を確保しておくことが不可欠です。
「安物買いの銭失い」という言葉があるように、安さだけで業者を選ぶのは危険です。冷静に情報を比較し、信頼できる業者を選んでください。








