パソコンが正常に起動しない、動作が遅くなる、または画面が表示されないなどの問題が発生した場合、RAM(ランダムアクセスメモリ)のトラブルが原因のケースがあります。
RAMの抜き差し方法とは?その重要性と注意点を理解することで、多くのパソコントラブルを自分で解決できる可能性があります。ここでは、その具体的な方法や安全な実施手順、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
RAMの抜き差しとは
RAMの抜き差しとは、メモリーモジュールを一度取り外し、再度しっかりと装着し直すメンテナンス方法です。接触不良や酸化による動作不良を改善する効果が期待できます。
なお、パソコンのRAMとメモリは同じ意味ですので、どちらの表現でも同じ作業を指します。
RAMが引き起こす問題の症状と診断方法
RAMの接触不良や故障によって、以下のような症状が現れることがあります。まずは自分のパソコンの症状を確認してみましょう。
起動関連の症状
- パソコンの電源は入るが画面が真っ暗
- 起動時にビープ音が複数回鳴る
- Windowsロゴが表示されずに止まる
- 再起動を繰り返す
動作中の症状
- 突然フリーズする頻度が高い
- 動作が非常に遅くなる
- アプリケーションが予期せず終了する
- ファイルが開けない・保存できない
エラー関連の症状
- ブルースクリーンエラー(BSoD)が頻発
- 「メモリが不足しています」の表示
- システムエラーメッセージが表示される
- データが破損する現象
これらの症状が見られる場合、パソコンの電源が入らなくなった際の復旧手順と合わせて、RAMの抜き差しを試してみる価値があります。
RAMの抜き差し作業に必要な道具と準備
作業前の重要な注意事項
RAMの抜き差し作業は、正しく行えば安全ですが、間違った方法で実施すると部品を破損する可能性があります。不安な場合は、自分でパソコンを格安修理する方法を参考に、基本的な知識を身につけてから作業を行うことをお勧めします。
必要な道具一覧
| 道具名 | 用途 | 入手難易度 | 必要性 |
|---|---|---|---|
| プラスドライバー | ケース開封 | 容易 | 必須 |
| 静電気防止手袋 | 静電気対策 | 普通 | 推奨 |
| エアダスター | 清掃作業 | 普通 | 推奨 |
| 接点清掃剤 | 端子クリーニング | やや困難 | オプション |
| 懐中電灯・LEDライト | 視界確保 | 容易 | 推奨 |
作業環境の準備
- 作業スペース:十分な広さがあり、静電気が発生しにくい場所を選ぶ
- 照明:手元がよく見える明るい環境を確保する
- 時間:急がずに作業できる時間帯を選ぶ(一般的には30分〜1時間程度)
- 湿度:乾燥しすぎていない環境が理想的
RAMの抜き差し手順(ステップバイステップガイド)
以下の手順に従って、慎重にRAMの抜き差し作業を進めてください。各ステップで確認を怠らず、安全第一で作業を行いましょう。
シャットダウンと電源の完全切断
パソコンを正常にシャットダウンし、電源ボタンを押して完全に電源を切ります。デスクトップの場合は電源ケーブルを抜き、ノートパソコンの場合はバッテリーも取り外します。
確認ポイント:電源ランプが完全に消灯していること、ファンの音が停止していることを確認してください。
静電気対策の実施
作業前に金属製の物体(水道の蛇口など)に触れて体の静電気を放電します。可能であれば静電気防止手袋を着用し、作業中は定期的に放電を行います。
パソコンケースの開封
デスクトップの場合はサイドパネルを外し、ノートパソコンの場合は底面のメモリーカバーを開けます。ネジの紛失に注意し、取り外したネジは小皿などに保管します。
RAMスロットの位置確認
マザーボード上のRAMスロットを確認します。一般的には細長いスロットで、両端にロッククリップが付いています。LEDライトを使って内部をよく観察しましょう。
RAMの取り外し
両端のロッククリップを同時に外側に押し開きます。RAMが斜めに浮き上がったら、まっすぐ引き抜きます。力を入れすぎず、ゆっくりと作業することが重要です。
注意:RAMの基板部分や端子に直接触れないよう、端の部分を持って扱ってください。
端子部分の清掃
取り外したRAMの端子部分(金色の接点)に汚れや酸化が見られる場合は、乾いた清潔な布で軽く清拭します。頑固な汚れには接点清掃剤を使用することも可能です。
スロットの清掃
RAMスロット内にホコリが溜まっている場合は、エアダスターで吹き飛ばします。ブラシなどは使わず、圧縮空気のみで清掃することを推奨します。
RAMの再装着
RAMの切り欠き部分をスロットの突起に合わせ、まっすぐ押し込みます。両端のロッククリップがカチッと音を立てて閉まれば装着完了です。
確認ポイント:RAMがスロットに完全に押し込まれ、両端が均等に固定されていることを確認してください。
ケースの復旧と動作確認
すべてのカバーを元通りに取り付け、ケーブル類を接続します。電源を入れて正常に起動するか確認し、動作テストを行います。
RAMの抜き差し作業における重要な注意点
絶対に避けるべき行為
- 電源が入った状態での作業:感電や部品破損の原因となります
- 無理な力での取り外し:RAMやスロットの破損に繋がります
- 端子への直接接触:皮脂や汚れが付着し、接触不良の原因となります
- 水分のある環境での作業:ショートの危険があります
機種別の特殊な注意点
デスクトップパソコン
- ATXケースの場合、電源ユニットの位置に注意
- グラフィックカードが邪魔する場合は一時的に取り外す
- CPUクーラーとの干渉に注意
ノートパソコン
- 機種によってはキーボードを外す必要がある
- SO-DIMMとDDR4の違いを理解する
- バッテリーの完全な取り外しが必要
一体型パソコン
- 分解が複雑で専門知識が必要な場合が多い
- 保証対象外になる可能性を考慮
- メーカーサポートへの相談を優先
RAMの抜き差し以外のトラブルシューティング方法
RAMの抜き差しで問題が解決しない場合、以下の方法も試してみましょう。
メモリーテストの実施
Windows標準のメモリ診断ツール
Windowsに標準搭載されている「Windowsメモリ診断」を使用してRAMの動作確認を行います。スタートメニューから「mdsched」を検索して実行できます。
| ツール名 | 特徴 | 実行時間 | 詳細度 |
|---|---|---|---|
| Windowsメモリ診断 | 標準搭載、簡単 | 15-30分程度 | 基本的 |
| MemTest86 | 詳細な検査が可能 | 数時間 | 非常に詳細 |
| MemTest86+ | オープンソース版 | 数時間 | 詳細 |
別のメモリースロットでのテスト
RAMを別のスロットに挿し直すことで、スロット自体の故障を確認できます。マザーボードに複数のスロットがある場合は、順次試してみることをお勧めします。
BIOS/UEFI設定の確認
BIOS/UEFI設定でメモリーの認識状況を確認し、必要に応じて設定をリセットします。CMOSバッテリーの交換が必要な場合もあります。
よくある質問と回答
RAMの抜き差しはどのくらいの頻度で行うべきですか?
特に問題がない場合は、定期的に行う必要はありません。パソコンの動作に異常を感じた際や、年に1-2回程度のメンテナンスとして実施する程度で十分です。
作業中にRAMを落としてしまいました。大丈夫でしょうか?
RAMは比較的丈夫な部品ですが、基板にクラックが入ったり、端子が損傷する可能性があります。外観を確認し、異常があれば使用を控えて交換を検討してください。
ノートパソコンでもデスクトップと同じ方法で大丈夫ですか?
基本的な原理は同じですが、ノートパソコンではSO-DIMMという小型のRAMが使用されており、取り外し方法が若干異なります。機種によってはアクセスが困難な場合もあります。
RAMの抜き差し後、パソコンが起動しなくなりました
RAMが正しく装着されていない可能性があります。再度取り外し、切り欠きの位置を確認してしっかりと押し込んでください。それでも起動しない場合は、他の原因も考えられます。
RAMの抜き差し方法とは?その重要性と注意点 – まとめ
RAMの抜き差し方法は、パソコンの動作不良を解決するための効果的な手段の一つです。正しい手順で慎重に作業を行えば、多くのメモリー関連のトラブルを改善できる可能性があります。
成功のポイント
- 安全第一:電源の完全切断と静電気対策を徹底する
- 慎重な作業:無理な力を加えず、ゆっくりと確実に行う
- 清掃の重要性:端子部分とスロットの清掃を丁寧に行う
- 確認作業:再装着後の動作確認を必ず実施する
ただし、パソコンの使用年数が長い場合や、他の部品に問題がある場合には、RAMの抜き差しだけでは解決しないケースもあります。複雑な問題や作業に不安がある場合は、専門業者に相談することも重要な選択肢の一つです。
パソコンのトラブルは深刻になる前に早期対処することが、長期的な安定動作を維持するためのカギとなります。定期的なメンテナンスとともに、適切な診断と対処を心がけましょう。








